プロフォーマインボイス(Proforma Invoice)とは?貿易用語を実践的に解説

貿易ビジネスをしていると必ず目にするインボイス。インボイスの中でも、今回は特にProforma Invoiceプロフォーマインボイスを中心に貿易用語や内容、用途などを実践的に解説していきます。

プロフォーマインボイス(Proforma Invoice)とは

輸入ビジネスや貿易に少しでも携わっていれば、必ず「インボイス」という言葉を耳にします。実際の貿易取引では、一般的にインボイスというと通関時に必要なコマーシャルインボイス(Commercial Invoice)、つまり「送り状や明細書」を指すのですが、実は用途や役割に応じて様々な種類の「インボイス」が存在することはあまり知られていません。そこで、今回は様々なインボイスの中でも、コマーシャルインボイスと並んで重要度の高いプロフォーマインボイスを中心に解説していきたいと思います。
まず、プロフォーマ(Proforma)という聞き慣れない単語ですが、英語のプロフォーマ(Proforma)は「仮の、形式上の」という意味です。そこで、プロフォーマインボイスを直訳すると「仮の送り状」という意味なのですが、これでは必要性や意味がサッパリ分かりませんよね。
プロフォーマインボイスは、正式なコマーシャルインボイス(送り状)に先駆けて発行される仮の送り状であり、商品の明細や価格、貿易条件、請求先、発送先、輸送方法、支払い方法、銀行情報など売買にまつわる詳細情報が表記されているため、一般的には「請求書」や「見積書」と解釈されています。

コマーシャルインボイス(Commercial Invoice)との違い

コマーシャルインボイス(送り状)は貨物の出荷時に発行される船積み書類であり、このインボイスを元に輸出および輸入申告が行われます。従って、基本的には途中で変更することはできません。
対して、プロフォーマインボイスは正式なコマーシャルインボイス(送り状)に先駆けて発行される仮の送り状です。あくまでも請求書や見積書であり、公的な効力を持つ書類ではありません。また、日本では通関書類として効力を持たないため、税関に提出するのはコマーシャルインボイスである必要があります。
但し、国や地域によってはプロフォーマインボイス(P/I)で通関できる、もしくは輸入許可申請にP/Iが必要となるケースもあるため、稀にコマーシャルインボイスの代わりにプロフォーマインボイスを送付してくる輸出者もいます。
日本ではプロフォーマインボイスでの輸出および輸入通関はできません。コマーシャルインボイスが必要となりますので、貿易実務に慣れていない方は、特にこの点をご注意ください。
コマーシャルインボイスの詳細については、こちらをご確認ください

ETD、ETAとは?インボイスで見る貿易用語解説

 

プロフォーマインボイス(Proforma Invoice=P/I)の用途とは

プロフォーマインボイスは、正式なコマーシャルインボイスの「仮」の書類です。しかも日本では通関に利用できません。では、プロフォーマインボイスはどのような場面で必要になるのでしょうか?そこで、プロフォーマインボイス(P/I)の用途について詳しく解説して行きます。

 P/I用途① 見積として使用

1つ目の用途は見積としての使用についてです。
海外企業との取引に際しては、まずは見積書(Quotation)を取得することから始まります。その次のステップとして、輸入者が発注書を発行し、輸出者が注文内容の確認を兼ねて商品明細や価格、貿易条件、請求先、発送先、輸送方法、支払い方法など売買にまつわる詳細情報を記載したプロフォーマインボイスを発行します。この場合のプロフォーマインボイスは、「この内容で手配しますよ」という意味なので、いわば最終の見積書として、注文確認書(Order Confirmation)と同じような用途で使われます。

P/I用途② 請求書として使用

2つ目の用途は請求書としての使用についてです。
プロフォーマインボイスには商品明細や価格、貿易条件、請求先、発送先、輸送方法、支払い方法等の他に銀行口座情報が表記されているのが一般的で、請求書としても使用されます。商品代金の支払いにL/C(Letter of Credit=信用状)を開設したり海外送金を利用する場合は、決済銀行から手続きの際にインボイスの提出が求められます。貨物の出荷前に支払いが発生する場合は、インボイスの代わりにプロフォーマインボイスを請求書として使用します。

 P/I用途③ 仮送り状として使用

3つ目の用途は仮送り状としての使用についてです。
国によっては、貨物の輸入に先駆けて事前の輸入許可申請を義務付けている場合があります。この場合、事前にプロフォーマインボイスを提出することで輸入許可を得ることができます。但し、日本はこの限りではありません。

プロフォーマインボイスの作成方法

プロフォーマインボイスP/Iは輸出者が作成する書類であり、フォーマットは自由です。作成方法は一般的なインボイスとほぼ同じで、基本的には一部の項目を追加・変更するだけで簡単にプロフォーマインボイスに変更することができます。輸入の場合ですと、プロフォーマインボイスの主な用途は、最終の見積書または注文確認書、もしくは商品代金の支払いに使用する請求書となります。

一般的な様式例と必要な項目

コマーシャルインボイス同様、プロフォーマインボイスは輸出者が各自で作成するものであり、フォーマットや項目に明確な決まりがないため、会社によって全く書式が異なります。但し、記載すべき必要最低限の情報というものがありますので、しっかり基本を抑えておきましょう。今回は、一般的なP/Iを参照しながら、表記されている内容について解説していきます。

 ① 会社ロゴ&会社情報

会社のロゴと会社情報(社名、住所、連絡先等)が並記されているのが一般的。

② Bill To: 請求書送付先

支払いを請求する相手先(輸入者)の情報を記載

③ Ship To: 貨物の配送先

貨物を配送する相手先を記載。輸入者と異なる場合があります(輸入者が提携している第三者の倉庫など)。

④ Item No.:品番/Description:商品詳細

商品詳細は、税関で輸入関税率を決定するために、商品がどの分類に該当するかを判断する重要な情報源となるため可能な限り細かく具体的な内容を記載。
また、品番をベースに管理した方がトラブルを回避することができます。発注時にも必ず品番を付けるようにしましょう。

⑤ Q’ty: 発注数量/Unit Price:単価

品番ごとに発注数量と単価を記載し、金額を算出します。

⑥ Total:合計金額

商品代金に加え、Freight(運賃)やInsurance(保険)を別途請求する場合はすべての金額を加算し、請求の合計金額を記載します。この際、必ず通貨を表記します。

⑦ Terms:取引条件

Trade Terms: 貿易条件
貿易条件(インコタームズ)を記載。商品価格の根拠を明確にするものであり、輸出や輸入申告時に必要な情報となるため必ず記載します。
貿易条件に関する詳細はこちら

貿易におけるDAP、DPU、DDP 3つの規則とは?インコタームズ(貿易条件)について

Payment Terms:支払条件
プロフォーマインボイスは最終の見積書であり請求書ですので、必ず支払条件を記載します。L/C(信用状)や銀行送金、金額が少額であればクレジットカード決済や最近はPaypalなどのオンライン決済サービス等も実際の売買取引でよく利用されています。

Country of Origin:原産国
原産国によってFTAやEPA、TPPなどの経済連携協定や特恵関税制度が適用されるなど、関税率が異なります。原産国は必ず表記しましょう

⑧ Shipping Details:出荷詳細

どの港/空港から貨物を積込み、どの港/空港で貨物を降ろすのか明記します。
また、船便(by sea)や航空便(by air)、DHLやFedEx等のクーリエ(国際宅急便)など、輸送手段を記載します。

⑨ Bank Information:銀行口座情報

プロフォーマインボイスの「請求書」としての役割を果たすために最も重要な項目である、輸出者の銀行口座情報を記載します。

Bank Name/ Branch/ Address
金融機関の情報(銀行名、支店名、住所等)を記載。

SWIFT Code(BIC):銀行識別コード
世界中の銀行や金融機関を識別するためのコードで、8桁または11桁のアルファベットと数字で構成されるIDのようなものです。
SWIFTコードに関しては、各金融機関に直接問い合わせて下さい。

Account No: 口座番号
いわずもがな銀行の口座番号です。また欧州を中心にIBANが採用されています。IBANは銀行口座の所在国、支店、口座番号を特定するための統一規格のコードです。ちなみに日本ではIBANは採用されていません。

Beneficiary:受取人
口座の名義を記載。まれに輸出者と口座名義が異なる場合がありますので、要チェックです。

プロフォーマインボイス(Proforma Invoice)のテンプレート

ここまでプロフォーマインボイスに記載されている必要最低限の情報について解説してきました。実際のビジネスシーンで使用されているプロフォーマインボイスのサンプルをご覧ください。

また、プロフォーマインボイスのテンプレート(雛形)をダウンロードできます。
Excelのフォーマットに直接入力して作成することができますので、テンプレートをダウンロードしてプロフォーマインボイスの作成にお役立てください。
ダウンロード: Excelファイル
※ 但し、プロフォーマインボイスの書式は自由です。テンプレートは個人の判断でお使いください。

インボイス(Invoice)について

インボイスは海外へ商品を輸出する時または海外から商品を輸入する時に、商品価格の大小や有償・無償にかかわらず必要となる書類の1つです。また、船便や航空便による国際輸送、DHLやFedEx、UPSなどのクーリエ(国際宅急便)、または郵便局のEMS(国際スピード郵便)など、どの輸送手段で発送する場合でも必要となります。

インボイス(Invoice)の役割について

インボイスには大きく分けて3つの役割があります:
◆ 誰から誰へ輸送している貨物かを示す「送り状
◆ 商品内容や数量を記した「明細書
◆ 商品代金の支払いを求める「請求書

など様々な役割があります。また、国境をまたぐ海外との物品の往来では、輸出時および輸入時にどんな小さな物品でも申告が必要で、通関では輸出入が制限されているものをチェックしたり、適用する関税率を決めるために、物品の詳細情報をまとめたインボイスが求められているのです。また、無償の物品の場合でも、インボイスは必要となります。

インボイス(Invoice)の種類まとめ

インボイスには様々な役割があるため、用途に合わせて様々な種類があります。
ここではインボイスの種類をまとめてご紹介します。

プロフォーマ インボイス(Proforma Invoice)

プロフォーマインボイスには注文確認書(Order Confirmation)の役割を担う最終の見積書、商品代金の支払いに利用する請求書、事前の輸入許可申請するための仮送り状として、3つの役割があります。
但し、プロフォーマ(Proforma)は「仮の」という位置づけであるため、輸出や輸入時の正式なインボイスとしては使用できません。通関時にはコマーシャルインボイスが必要となります。

コマーシャル インボイス(Commercial Invoice)

コマーシャルインボイスは正式なインボイスです。このインボイスを元に輸出入の通関を行います。輸入時には適用する関税率を決めたり、輸入消費税の算出に用いられますので、合計金額や貿易条件など正確に記入する必要があります。
また、DHLやFedEx、UPSなどのクーリエ(国際宅急便)、または郵便局のEMS(国際スピード郵便)などによる少額貨物、サンプル品やプレゼント等の無償提供品の輸送であってもインボイスに沿った通関が必要となります。
無償の物品の場合は、インボイスに記載する価格を「0(ゼロ)」にはせず、必ず価値額を記入します。そして税関で無償の物品だと一目で分かるように、インボイス上に”No commercial value/Value for customs purpose only(無償の貨物であり、申告用の価値額”という文言を表記します。

シッピングインボイス(Shipping Invoice)

シッピングインボイスは出荷案内や指示書、または納品書のような役割があります。実際の貿易において使用頻度は少なく、また申告には使用できません。

カスタムズインボイス(Customs Invoice)

カスタムズインボイスは税関に向けて作成する書類ですが、コマーシャルインボイスを使って申告するのか一般的です。但し、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、南アフリカなど、特定の国では輸入時に必要とされる場合もあります。

コンシュラーインボイス(Consular Invoice)

コンシュラーインボイスは「領事送り状」や「領事査証インボイス」のことで、輸出国にある輸入国の大使館(もしくは領事館)で特定のフォーマットのインボイスに査証を受けたインボイスのことです。主に、ダンピングの防止や統計資料の作成、原産地の確認などを目的に、輸入国側からのリクエストを受けて作成されるインボイスとなります。ただ、ハッキリ言って、貿易の現場では殆ど目にすることはありません。

インボイス記載ミスによるリスク

インボイスには、貨物出荷の際に必要となる送り状や、商品内容や数量を記した明細書、商品代金の支払いを求める請求書など様々な役割があります。そのため、インボイスの記載ミスによって様々なトラブルが発生し、思いもよらぬリスクを負うことにもなりかねません。
例えば、輸出入の通関時に必要となるコマーシャルインボイスの金額に誤りがあったとすると、基本的にインボイスに記載された情報を元に輸入時の関税・消費税の納付額が算出されることになるため、本来支払うべき関税・消費税よりも高く支払っていた、もしくは不足していたというトラブルが発生します。この場合、税関に対して修正申告を行う必要があるのですが、過払いで還付ならまだしも、過小に納税して納付額が不足していた場合は過小申告加算税というペナルティが課されます。
また、インボイスに記載されている貨物と実際に積み込まれていた貨物が異なったり、数量が異なるなど、記載ミスや記載漏れにより関税や消費税が適切に課税されずに輸入申告されたとなると、ワザとではないにせよこれは立派な脱税行為となってしまいます。数量が異なるだけならまだしも、貨物の内容が異なる場合は、最悪の場合、貨物の積み戻しや廃棄になる可能性もあります。

異文化の違いに悩む

さらに、インボイスには明細書や請求書としての役割もあります。インボイスの記載ミス、もしくはチェック漏れによって発注していない商品が送られてきた、もしくは発注していない商品代金まで支払っていたというトラブルが発生する場合もありますので、特にコマーシャルインボイスやプロフォーマインボイスは記載内容を細かくチェックする必要があります。

 

輸入ビジネスに関するあらゆる問題は専門家に任せて安心

最後に、貿易は1回の単発取引ではなく、継続的に取引を繰り返すことが前提になります。そこで、理解できていないことや分からないことをそのまま放置して、適当に取引を進めてしまうと、ゆくゆく大きなトラブルに繋がります。貿易に関する重要書類の内容がよく理解できないなど、少しでも不安を感じたらそのまま放置せず、いつでもご相談ください。


最後に、現在海外企業と取引をしている、もしくはこれから取引を始める方に朗報です!

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