T/T送金の意味とは?貿易取引における送金方法の種類と使い方

あらゆる売買取引において、切っても切れないモノが決済つまりお金の支払いです。国内取引であれば、「月末締め翌月末払い」など後払いで銀行振込にて簡単に支払を済ませることができます。ところが、取引相手が外国にいる貿易取引の場合、国内取引以上に支払いに慎重になる必要があるため、様々な送金方法が利用されています。今回は、海外への送金方法の種類と使い方を紹介すると共に、貿易取引において最もポピュラーな送金方法の1つ、T/T(ティーティー)送金を中心に解説していきます。

貿易取引における外国送金方法

貿易取引における決済では、様々な外国送金の種類や用途に合わせた使い方があります。代金決済において最も簡単で安心できるのは現金払いです。ところが、相手が国外にいる貿易取引では、商品と引き換えに現金払いをすることはまず不可能です。また、法律や商習慣が異なる上、遠く離れた外国にいる相手では、国内取引に比べてお金にまつわるトラブルが多発します。商品代金を支払ったにもかかわらず、商品が届かないというトラブルもよく聞きますよね。そこで、貿易取引における決済では、いかにトラブルを回避し、リスクを抑えるかが重要なポイントであり、ビジネスの現場ではあらゆるリスクを軽減するために様々な外国送金方法が利用されているのです。そこで、今回は外国送金の種類を細かく紹介して行きたいと思います。

 T/T (Telegraphic Transfer):電信送金

貿易取引の支払いは一般的に銀行経由で行われます。T/T(ティーティー)送金は、銀行を経由する外国送金で最もポピュラーな送金方法で、T/T remittanceとも呼ばれ、国を越えた銀行間の電信送金です。銀行から銀行への支払い指示を電信で行うため、電信送金と呼ばれています。簡単に言うと、一般的な銀行振込のようなものです。

ちなみに、海外の銀行に送金する際には、SWIFT (国際銀行間通信協会)のネットワークを介して、

送金銀行⇒中継銀行(コルレスバンク)⇒受取銀行

の少なくとも3つの銀行を経由して外国送金が行われることになります。T/T送金は銀行の外為サービス窓口で手続きができます。昨今はインターネットバンキングでも外国送金ができますが、送金に必要な情報など少し複雑ですので、慣れるまでは銀行窓口で手配することをお勧めします。

 M/T(Mail Transfer):普通送金または郵便送金

M/T(普通送金)は、基本的にはT/T送金と同じ仕組みですが、銀行から銀行への支払い指示や連絡が電信ではなく、航空郵便(Mail)で送られるのが特徴です。M/T送金はT/T送金と同様、銀行の外為サービス窓口で手続き可能です。

D/D(Demand Draft):送金小切手

D/D(Demand Draft)のDraftは小切手の意味です。D/Dでは送金人(輸入者)が銀行から送金小切手の交付を受け、これを受取人(輸出者)に郵送する方法です。受取人は、小切手と身分証明書を銀行に呈示することで、現金に換金することができます。

海外送金サービス

従来の貿易取引における外国送金は、銀行間の電信送金(T/T)が主流でしたが、昨今は銀行のほかに海外送金サービス会社を利用するという選択肢もあります。

送金銀行⇒中継銀行(コルレスバンク)⇒受取銀行の3つの銀行を経由する電信送金(T/T)とは異なり、海外送金サービス会社は世界中に自社の口座を開設しており、その独自の送金ネットワークを利用することで海外送金を簡素化しています。パソコンやスマートフォンから簡単にアカウントが開設でき、すぐに送金することができます。但し、ビジネスアカウントを開設する場合は、アカウント開設までに日数を要する場合があります。

オンライン決済サービス

世界で最も多く利用されているオンライン決済サービスと言えば、Paypal(ペイパル)が有名ですね。相手先(輸出者)からPaypalを経由してメールで請求の連絡が届くため、アカウントを開設する必要もなく、届いたメールからクレジットカードやデビットカードで簡単に決済することができます。但し、請求書を発行する側であれば、アカウント開設は必要となりますのでご注意ください。また、Paypal以外にも様々なオンライン決済サービスがあります。

 

各外国送金方法のメリットとデメリット

ここまで色々な外国送金方法の種類を紹介してきましたが、実際に貿易取引で利用するにはそれぞれメリットとデメリットがあります。メリットとデメリットをきちんと理解した上で、用途に合わせて上手く使い分けることが大切です。

T/T (Telegraphic Transfer):電信送金のメリット・デメリット

T/T(電信送金)のメリットとデメリットについて詳しく説明していきます。T/T送金は、貿易取引において最も代表的な決済方法です。また銀行間の保証が介在するL/C(Letter of Credit):信用状とは異なり、決済に必要な船積書類を揃えたり、納期や船積スケジュールの遅延、積載貨物の内容が異なるなど、諸条件の変更に従ってL/C(信用状)を修正する等の面倒な手続きは必要ありません。基本的には、銀行振込と同じ位置づけであるため手続きがシンプルで、自由度が高く、銀行間の支払い指示を電信で行うため、送金依頼から着金まで非常にスピーディーなのが最大のメリットです。また、送金金額に上限も設定されていませんので、金額の大きな売買取引にも対応可能です。

デメリットとしては、L/C(信用状)ほどではないにせよ、送金銀行⇒中継銀行(コルレスバンク)⇒受取銀行の3つの銀行を経由するため銀行手数料が高くなること、また合法な送金であることを証明するためにProforma Invoice(プロフォーマインボイス)の提示が必要な上、銀行から色々とヒアリングがあることです。T/T送金の銀行手数料については、また後の章で詳しく説明して行きます。

※Proforma Invoice(プロフォーマインボイス)に関する詳しい説明はこちらから

プロフォーマインボイス(Proforma Invoice)とは?貿易用語を実践的に解説

 

M/T(Mail Transfer):普通送金のメリット・デメリット

M/T(普通送金)のメリットとデメリットについて詳しく説明していきます。M/Tでは、銀行から銀行への支払い指示が電信ではなく、航空郵便(Mail)で送られます。そのため、T/T(電信送金)に比べて銀行手数料は安く抑えられるというメリットはありますが、着金までに時間を要します。つまり、着金が遅れることで取引が停滞するというデメリットがありますので、スピード感が求められる貿易取引やビジネスにおいて、M/Tが利用されることは殆どありません。

D/D(Demand Draft):送金小切手のメリット・デメリット

D/D(送金小切手)のメリットとデメリットについて詳しく説明していきます。D/Dでは送金人(輸入者)が銀行から送金小切手の交付を受け、これを受取人(輸出者)に郵送します。メリットとしては、銀行口座がなくても小切手を現金に換金することができます。デメリットとしては、小切手の輸送に時間を要すること、輸送中に紛失や盗難等のリスクがあることです。

但し、そもそも銀行口座がない相手と取引すること自体がリスクであり、安心安全なビジネスとは言えません。あまりメリットがないことから日本では殆ど利用されておらず、また近年送金小切手の発行サービスを停止する銀行が増加しています。色々とリスクが高いことから貿易取引においてD/Dが利用されることは殆どありません。

海外送金サービスのメリット・デメリット

海外送金に特化した海外送金サービスのメリットとデメリットについて詳しく説明していきます。海外送金サービスの最大のメリットは、手続きが簡単でパソコンやスマートフォンからでも送金が可能ということ。また、独自の送金ネットワークを利用するため、T/T送金と比較して銀行手数料が安く、また着金までのスピードが速いのも特徴です。その手軽さと安さから、近年はビジネスシーンでも外国送金に海外送金サービスが利用されています。

デメリットとしては、海外送金サービス会社によっては、一度に送金可能な金額に上限が設定されている場合があります。そのため、限度額を上回る金額を送金する場合には、分割して送金手配する必要があります。

海外送金サービスはサンプル代金の支払いや少額の代金決済には最適ですが、多額の代金決済には不向きと言えます。

オンライン決済サービスのメリット・デメリット

オンライン決済サービスのメリットとデメリットについて詳しく説明していきます。オンライン決済サービスの最大のメリットは、アカウント開設を含め手続きが殆ど必要ないシンプルさです。また、パソコンやスマートフォンから簡単に決済することができる上、決済サービスの利用手数料は基本的に請求書を発行する側の負担となります。但し、場合によっては利用手数料を商品代金に上乗して請求されることもありますので注意が必要です。デメリットとしては、利用手数料が請求された場合は、手数料がかなり高くなります。

 

T/T送金の支払条件について

ここでは決済条件がT/T送金である場合の、実際の支払条件について説明していきます。

貿易取引において最も重要なことは、いかに代金決済におけるリスクを軽減するか、どうやってリスクヘッジをするかということです。法律や商習慣が異なる上、遠く離れた外国にいる相手、しかも輸出者と輸入者という相反する立場の者同士が取引するワケです。輸出者側からすれば、なるべく早く代金回収したい、できれば貨物出荷前に全額前払いして欲しいと考えます。逆に、輸入者側からすれば、なるべく支払いのタイミングを遅らせたい、できれば貨物到着後に内容を確認してから後払いしたいと考えます。

そこで、輸出者側が確実に代金回収でき、輸入者側が確実に商品を受け取れる、売買取引の安全性を確保するために銀行間の保証が介在するL/C(Letter of Credit)と呼ばれる信用状が利用されるのですが、L/Cは非常に手続きが煩雑な上、銀行手数料も高くなります。そこで、L/Cと比べて手続きが簡単で銀行手数料も安いT/T送金(電信送金)がよく利用されるのですが、T/T送金は一般的な銀行振込と同じであるため、残念ながら取引の安全性を担保することはできません。

そのため実際の貿易取引では、お互いにリスクを折半するために支払条件を前払いと後払いに分割することがあります。例えば、発注時に商品代金の一部をデポジット(頭金)としてT/T送金し、貨物を積載した本船が出港した際に発行されるB/L(Bill of Landing:船荷証券)が発行された日から○日以内にバランス(残金)をT/T送金するというように、T/T送金のタイミングを船積み前と後でずらすことで輸出者・輸入者ともにリスクを分担するのです。

ちなみに、T/T送金による前払いの場合は、T/T remittance in advance、後払いの場合はT/T remittance ○ days after B/L date と表記します。

また、T/T送金による決済条件の場合:

① 割合 (デポジットとバランスのパーセンテージ)

② タイミング(デポジットとバランスの支払時期)

の2点は最低限、取引の初期段階からしっかり交渉して、支払条件を取り決めておく必要があります。後から変更するのは難しいため、最初が肝心です。

 

 T/T送金の手続き方法を解説

ここではT/T送金の手続き方法を解説して行きます。まず、T/T送金は銀行口座を開設している銀行の外為サービス窓口で手続きができます。一般の銀行窓口ではなく、外為窓口はフロアが異なることが多いですね。またT/T送金の手続きには、外為窓口で入手可能な外国送金依頼書兼告知書を記入すると共に、マネーロンダリング防止やテロ資金供与防止のため、または外国為替および外国貿易法に抵触していないことを確認するため、Invoice(インボイス)またはProforma Invoice(プロフォーマインボイス)、契約書など取引内容が確認できる書類の提出が必要となりますのでご注意ください。あと、当たり前ですが、銀行口座に外国送金金額+銀行手数料分の預金があることもご確認ください。

 

T/T送金の手数料について

T/T送金の手数料は、L/C(信用状)ほどではないにせよ、送金銀行⇒中継銀行(コルレスバンク)⇒受取銀行の3つの銀行を経由するため、ほかの外国送金に比べて送金手数料が高くなります。また、様々な名目の手数料が発生しますので、詳しく説明して行きたいと思います。

■ 外国送金手数料(※)
送金銀行に支払う外国送金に掛かる手数料。振込手数料のようなものですね。

■ リフティングチャージ(※)
外国送金の際に、円貨預金から両替せずに円貨建てで外国送金するときに発生する手数料。円為替取扱手数料ともいいます。ちなみに、外貨預金から両替せずに外貨建てで外国送金する場合は、外貨取扱手数料が発生します。円⇒外貨建てに両替して送金する場合、手数料は発生しません。

■ 為替手数料(※)
各銀行が採用する為替レートに含まれる手数料。通貨の両替の際に発生します。ちなみに、為替レートは各銀行により、若干異なりますので要チェックです。

■ コルレスチャージ(海外中継銀行手数料)
送金時に中継する銀行(コルレスバンク)が徴収する手数料。中継する銀行が多いほど手数料は高くなる。また中継する銀行や通貨によって金額が変わるので、事前に正確な手数料を把握することが難しい。

■ 受取手数料
受取銀行で発生する手数料です。

 

 

T/T送金は、一般的な銀行振込とは言え、国を越えた銀行間の電信送金であるため、国内外で様々な手数料が発生します。こうなると、どの手数料をどっちが負担するのか?という新たな疑問が湧きますよね。T/T送金の手数料負担は、国内で発生する手数料(※)は送金人(輸入者)が負担し、国外で発生する手数料は受取人(輸出者)が負担するのが一般的です。また、受取人の口座には既に手数料を控除した金額で着金することになります。

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貿易取引では、代金決済だけでも様々な種類や方法があり、用途に合わせて上手く使い分けることが大切です。また、貿易は1回の単発取引ではなく、継続的に取引を繰り返すことが前提になります。そのため、取引条件や支払条件を取引の初期段階でしっかりと取り決めておくことが非常に重要です。もし、理解できていないことや分からないことをそのまま放置して、リスクヘッジをしないまま取引を進めてしまうと、ゆくゆく大きなトラブルに繋がる可能性があります。少しでも不安を感じたらそのまま放置せず、いつでもご相談ください。

最後に、現在海外企業と取引をしている、もしくはこれから取引を始める方に朗報です!

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